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掌編小説「取り残された相方」 [掌編小説]

掌編小説『取り残された相方』





『ツヨシ&つよし』、
これが二人の芸名です。


幼なじみの二人は
中学に入る頃から
マンザイにとても興味を持ちました。


将来プロとしてやって行こう
という思いが、
ひとつの道を共に歩ませていたのです。


tsuyoshi01.png


高校卒業後、
二人はすぐにあるプロダクションに
入りました。


下積み生活が始まりました。


狭いアパートでの共同生活、
昼は同じファーストフード店で
アルバイト、

夜はネタ合わせをし、
けんか腰で練習をしました。


その成果を試すため、
あらゆるマンザイ大会へ出場しました。


実演ができる場所には、
お客さんが一人でも出かけて行きました。


tsuyoshi02.png


そこで笑ってもらえることが楽しく、
とても希望に満ちた生活でした。


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デビューして三年経った頃です。


突然彼らに光が当たったのです。


若い芸人にスポットを当てた、
ドキュメンタリー番組に出演したのが
きっかけでした。


それから二人は急速に
テレビ出演なども増えて行きました。


『ツヨシ&つよし』、
このマンザイコンビは
有名になったのです。


冠番組こそ持たなかったのですが
人気は上々でした。


ある時、
彼らのマネージャーが言いました。



「ツヨシ、
おまえに一人で出て欲しいという、
ある局からの依頼があるが、
どうする?」

売れてからまだ半年も経っていません。


このようなことが起こるのは
想定していました。


二人で面と向かって
話し合ったことはありませんでしたが、
そんな場合断わろうという
暗黙の了解はありました。


理由は簡単です。


二人はマンザイをやりたかったのであり、
マンザイは二人でしかできなかったからです。



「つよし、おれ、その番組に出ていいかな?」


つよしは驚きました。


ツヨシの言葉が
つよしの頭の中で弾けて粉々に砕け、
真っ白い頭の中を舞いました。


何を言われたのか
一瞬分からなかったのです。


マネージャーも

「おまえもそのうち誘いが来るだろうから、
これからはお互いそうしたら」

と軽くアドバイスしたのです。


それからは
二人でマンザイをすることは少なくなり、
ツヨシが一人で
テレビに出ることが多くなりました。


つよしは寂しかったのですが、
ツヨシのことを陰で応援しました。


そしていつかまた、
二人でマンザイをする時間が増えることを
信じていました。


そんなある日、
マネージャーが言いました。


「つよし、いよいよおまえの番だ。
声がかかったぞ。
あのトップ芸人が司会をする
ライブのトーク番組出演が決まったぞ」


つよしは驚きました。


ツヨシさえも出ていない
そのような大きな番組に
どうして自分が出られるのか
分かりませんでした。


しかしまったく嬉しくなかったのです。



「ツヨシと一緒に出れないんですか」


そんなつよしの願いを
苦笑いしながら
マネージャーは答えました。


「タイトルがさ、
『取り残された相方』っていうんだよ。
だからおまえ一人じゃなきゃだめなんだ。
それに番組ではおまえの相方ツヨシの
悪口をネタにして欲しいようだ」


つよしはマネージャーに断わりました。


そのタイトルに
腹を立てたのではありません。


弱肉強食の世界ですから、
負の話題さえもネタにするのは
仕方のないことだと理解しています。


ただし、
二人でやるマンザイの
ネタの中に織り込むのが条件で、
相方のいないところで
そんなネタは使えないと思っています。


この話を聞いたツヨシは、
「おれのことなら気にせずに出ろよ。
そうすれば、
いずれおれたち二人で
その番組に出られるかもしれない。
チャンスだぞ」

と、つよしに勧めました。


マネージャーからも説き伏せられ、
つよしはある覚悟を決めて
その番組に臨んだのです。


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ツヨシはこの番組に出たかったので、
つよしに対し妬みがありました。


でも自分も一人で出てきたので、
たまにはつよしが一人で出演するのも
致し方ないと思い、
番組をテレビで見ていました。


つよしが自分のことを
どんなふうに言うのかにも
興味がありました。



つよしにトークが振られました。


「おまえの相方のツヨシは
ひどいよな。
だっておまえたちは中学から
一緒にやってるんだろ。
何か言ってやれ!」


番組プロデューサーの意向にも拘らず、
つよしは相方の悪口は一切言いません。


それどころか、
何度振られても
良いところばかり話しました。


司会者は
「いい加減にしろ!」
と怒ってしまい、

それからは
つよしにトークを振ることは
なくなりました。


つよしは、
『ツヨシ&つよし』は
あくまでもマンザイコンビだという信念で、
一人で出た番組で
この業界を干されるのなら本望だ、
という覚悟を決めてこの番組に出たのです。


トークを振られなくなった相方が、
時折画面に出てきます。
その顔は清々しく、
微笑んでさえいました。


マンザイは二人でやるものだという
初心が戻り、
ツヨシの琴線を大きく震わせました。


ツヨシは号泣しました。


tsuyoshi03.png


― 了 ―





私がこの掌編小説を書いたのは、
5年前のことである。

執筆年月日 2010・05・30
ブログアップ日 2015・04・12





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【後 述】

先週4月10日、
TBSテレビ
「爆報!THE フライデー」で

女性漫才師
「今いくよ・今くるよ」
を通して

漫才コンビの在り方を放送していた。


そこで私が5年前に書いた作品を
改めて紹介させていただいた
次第である。

タグ:掌編小説
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